東京高等裁判所 昭和27年(う)2564号 判決
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(判旨)
所論の如く原審公判期日に検察官が本件訴因中起訴状記載の公訴事実第一(イ(ロ)の銀行業法違反罪の部分の撤回を請求し原審が之を許したことは同公判調書および起訴状により明らかであり、而して右銀行業法違反罪と同第二の貸金業法違反罪とは併合罪として起訴されたものと認めるのを相当とすること亦所論のとおりである。而して刑訴法第三一二条第一項が公訴事実の同一性を害しない限度において訴因の撤回を許す旨規定しているのは、撤回により訴因の内容に減少をしながら事件の審理を進めて訴訟経済を図る場合にも、つねに訴因の範囲を明らかにして被告人に防禦の準備を可能にする利益を確保する趣旨に外ならない。然るに、本件の如く併合罪として独立に存する数個の犯罪が一個の起訴状に併せて記載されている場合そのうち一個の犯罪事実に対する訴因をすべて撤回することは予備的または択一的訴因の如く一個の犯罪に対して数個の訴因の存するときその訴因の一部分を撤回する場合とも異り、その実貭は公訴の一部取消の場合にひとしく、その結果においても訴因の内容は明確であり且つ被告人の防禦上にも何らの不利益をすべき理由は見出せないから、公訴事実の同一性の存続を基準として訴因撤回に制限を加える旨規定している前記条項の法意に違反するところはないものと解するを相当とする。従つて本件につき銀行業法違反罪の訴因の撤回を許した原審の措置には所論のような訴訟手続上の違法はない。
(説明)
一個の犯罪事実に関する訴因全部を起訴に係る公訴事実の中から取り除く方法は起訴状訂正、訴因の撤回又は公訴の取消(刑訴法第二五七條)等考え得る方法のうちいずれによるべきか、起訴状訂正によるべきでないことは異論はないであろうが本判決のように訴因の撤回によるも可なりとする説は直ちに首肯し難いように思える、本判決も「その本貭は公訴の一部取消にもひとしく」と判示しているが、まさにその公訴の取消に相当するのでなかろうか。この点に関しては既に当庁第七刑事部判決(昭和二七・四・二四判決、二六(う)第四六五四号物牙保被告事件、高裁判例集第五卷第五號刑事六八六頁參照)が正当に必ず公訴の取消を要する旨判示しているので多言を用いない。